ネット通信第55号
ネット通信第55号の内容をテキスト形式で紹介します。
疑問だらけの藤沢市学校プール集約化
松本一郎
2月21日、藤沢市議会子ども文教常任委員会での報告に、「藤沢市学校プール集約化に関する方針(案)について」があることを知り、おどろいて傍聴に行きました。
「学校プール集約化」は簡単にいうと、学校プールの維持費と老朽化による改善のため等の財政負担が大きいために、プールの集約化を図りたいという提案です。
経費削減第一 子ども達への配慮は二の次
具体的には①学校間での共同利用、②市営プール活用、③民間プール活用によって集約化をすすめるべく検討していきたい。いずれも一長一短があるが、プールの維持管理にかかる費用及び負担軽減を図りたいとしています。
小中学校それぞれに一校一プールがあることは、子どもたちが心配なく「水泳の授業」を受けることができます。藤沢のすぐれた教育環境の大きな1つだと思います。社会体育の見地からも学校プールは地域住民に開放されてきた経過があります。
今回、子どもたちの教育にどんな意味を持っているのか、が論議されないまま、財政上の負担で集約化に向けた方針を決定することは問題だと思います。その後、現場の先生方はほとんど「知らない」、担当の市会議員も「この日初めて知った」と聞きビックリしました。
子ども・職員の負担が増加
提案された3案はいずれも次のような問題点が生じると思います。まず、移動の問題は夏場の暑い中では熱中症になる可能性があり、これは低学年の小学生たちはかなりな負担が生じます。移動時に歩道がない道路を通行することが考えられ、交通事故が起きないか子どもだけでなく、引率する教員も安全に気配りしなければなりません。着替えの時間も生じ、実際にプールでの授業時間は大幅に減少します。また、民間のプールは経営難によって利用不可能になる事態が生じた場合、その代替案が必要になり、すぐに対応することは困難でその間、授業ができない事態が生じると思われます。近隣校でプールを利用しあう場合も時間の調整,水深・水位の調整をその都度検討しなればならない等々があります。
プール集約化を初めて聞いた現場の先生は中学校のプールを小学生が利用する場合、深すぎるので水を抜いて水位を合わせる。その後中学生が利用すると、水を元にもどさないといけない。水抜き・水増しには時間がかかり、先生方の負担が増える、水増しの使用量も膨大で水道代もかさむといった問題点が考えられるとのこと。
教育・社会教育・防災の観点で議論を
子どもたちの立場に立つと学校プールの集約化は困難点の方がはるかに多いと思われます。この問題は子どもたちの保護者や市民には全く知らされていません。先生方も一部のメンバーによってのみ検討されているのではないでしょうか。財政難・集約化が先にありき,そのための試行という方針では、納得できません。集約化が出てきたときこそ、子どもたちの教育的観点、社会教育、防災の観点で議論し、逆に財政的な支援を求めていくべきではないでしょうか。
請願提出も不採択 方針決定
毎回、教育委員会を傍聴した限りにおいては、教育委員のみなさんが学校プールに関して議論したようすはない。3月17日の定例会に「教育ネット」として「藤沢市学校プール集約化に関する方針(案)について の請願」を提出し、陳述も受けていただきました。教育委員からは請願内容に理解する声も聞かれ、教育長を除く4人の委員から意見表明もありました。最終的には請願は不採択となり、方針を承認することになりました。もっと時間をかけて議論されることを期待していましたが少なかったと思います。短時間で済ませるのではなく、初めて聞いたのであれば、持ち帰って検討する、他市町村で集約化した現状も調べる等をして再度議論する内容だと思いましたが、あっけない幕切れでした。
なにより子どもの声を聞いて
現場の先生方からより多くの意見を聞く、保護者も加わった公開の検討委員会を設置し、教育的な審議をする、市民からパブコメ等で意見を提出してもらう、といった民主的なルールがなされないままで事が進められるなら、とんでもないことだと私は思います。また、子ども達の声を聞くことを忘れないでほしい。
今後どうすべきかを検討するとも聞いています。「教育ネット」は教育委員会に懇談を申し入れています。意見交換を行うとともに、今後の動向に注目しながら対処していくつもりです。
みなさまにも協力いただくようなことも考えられますので、その節はよろしくお願いいたします。
藤沢市 今後のスケジュール
藤沢市教育委員会3月定例会で「学校プール集約化に関する方針」が決定されたことで、今年5月から11月にかけて3つの手法(①学校プールの共同利用、②市営プール活用、③民間プール活用)による試行事業が実施され、11月から2024年3月に試行事業の検証と課題整理が行われます。
2024年度以降順次、各集約化手法による水泳授業が実施されていくことになります。
海老名市 全小中学校プール廃止 中学はプール授業中止
綾瀬市は公共や民間プール利用 中学校水泳実技なしに
海老名市は2011年度までに全19小中学校(小学校13、中学校6))のプールを廃止しました。
2008年度公共施設プールを利用しての水泳授業の試行を開始、2011年度には全ての小中学校が公共施設プールを利用するようになります。しかし、2015年度から特別支援学級を除き中学校のプール授業を中止しました。中止の理由として、①移動や準備に時間がかかること、②複数の学級が学校を離れるのは教科担任制の中学校では時間割の編成が非常に難しいことをあげています。廃止されたプールは備品置き場や釣り堀(市立杉本小学校)として利用されています。
綾瀬市は2023年1月「綾瀬市立小・中学校プールのあり方基本方針」を策定しました。小学校は、2024年度以降、高座施設組合屋内温水プールや民間プールなどで水泳の授業を実施します。中学校は、2023年度以降、プール築年数等を踏まえて順次理論学習へ移行とし、中学校での水泳の実技の授業は行われなくなります。
みんなでつくる教科書採択
今年2023年度は小学校教科書の採択年度です。
前回の小学校採教科書採択は4年前の2019年。今回の教科書採択の方針や採択審議委員会の構成・日程、教科書展示会の詳細等は教育委員会5月定例会(5月18日(木))で決まります。右の日程は4年前を参考にしたおおよその予想です。
展示会での意見の提出、審議会や教育委員会の傍聴などは、教科書採択の公開性・透明性を高め、市民や現場尊重の採択を実現する力になります。
2004年3月以前は市教委の会議録に発言者の名前はなかった
教育委員会の会議は会議録が作成され、市民に公開されています。今は教育委員会のホームページ(HP)でも見ることができ、だれがどんな発言をしたかを知ることができます。会議録に発言者の名前が記載されるのは、市民の要望や市議会でのやりとりを経て、2004年4月会議録からです。(当会のHPに2002年4月以降の会議録を保存しています。ご確認いただけます。)
採択の市教委 音声傍聴を要求して実現
2011年2015年の中学校教科書採択は、委員会の開かれている会場での傍聴だけで、抽選にはずれ会場に入れなかった人は音声の傍聴もできませんでした。当会や市民が市教委に音声傍聴の実施を要求。2017年小学校道徳教科書採択で、小ホールでの音声傍聴が実現しました。
市民意見書の一覧作成2017年
教科書展示会で提出した市民意見書は、簿冊として一冊が公開されるだけで一覧(まとめ)はつくられず、市民も採択審議委員会の委員も教育委員も利用しにくいものでした。他市の例も示し、一覧の作成を要望。事務局の努力もあり、2017年実現しました。
学校調査書まとめ作成2017年、採択審議委員会傍聴者に配付2020年
各学校から提出される「学校調査書」、学校現場の意見が集約されています。2017年そのまとめが作成され、HPに公開されました。また、2020年中学校採択では、第2回採択審議委員会で傍聴者に配付されました。採択の公開性・透明性の大きな前進です。
中学校部活動の地域移行 休日の部活動を2026年度には地域に完全移行
藤沢市は2022年度4回の部活動地域移行準備連絡会を経て「協議のまとめ」を作成、2023年4月教育委員会定例会に提出しました。これに基づき2023年度は3つのモデル事業を実施します。モデル①滝の沢中学校陸上競技部(地域指導者+兼職兼業教員による指導)、モデル②湘南台中学校吹奏楽部(部活動指導員+兼職兼業教員による指導)、モデル③高浜中学校サッカー部(総合型地域スポーツクラブによる指導)。2026年度には全19中学校で休日のすべての部活動を地域に移行する計画です。
学校適正規模・適正配置 実施計画作成のもととなる将来人口推計発表
学校適正規模・適正配置検討委員会は、2022年12月としていた実施計画(素案)の公表時期を、児童生徒数推計の精度をあげるために2023年6月に延期していました。その推計のもととなる将来人口推計が4月に発表されました。
最新の20年の国勢調査の結果から再検討し、これまで2030年としていたピークを5年後ろ倒しし、ピーク時の人口も約44万4千人から約45万4千人に約1万人上方修正しています。